めぐりあい
一日おきで風のある春である。
昨日のこと、風のなか名残のサクラの下を荻窪あんさんぶるまで、自転車でひとっ走り。
ボランティアグループの会計監査の立会いと庶務の引継ぎなど。
午前中に終わらして、さてちょうど「ささま」が開く時間!
久しぶりだ。隣町なのに、隣街すぎて?案外来られないものだ。
12:30ごろ着いたら、もう均一台は男性諸君でにぎわっていた。
ささまの均一台にはなんとなく緊張感がある。同じ本に手を出してしまったり、本に見入ってほかの人に接触したりする。私は、空いているところ目指してふらふらと移動するも、かごに数冊入れたところで、この緊張感に疲れて、中へ。
- 『信州のまほろば‐塩田平とその周辺』南原公平・若林伝 令文社 昭和57
- 『和菓子風土記』楠本憲吉 レモン新書 昭和46
- 『ハレー彗星1985-86』草下英明 平凡社 1985
- 『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー、東郷青児・訳 角川文庫 H7・50版
- 科学のアルバム『カミキリムシ』 岸田功、あかね書房 1981
ささまの開いたばかりの店内は、棚がしゃきっとしていていい。
- 『アメリカの61の風景』 長田弘 みすず書房 2004 ホッパーの絵を使った表紙がいい。
- 『き』 谷川俊太郎・詩、堀文子・絵、諸井誠・曲 至光社 1979-80
- 『くつやの まるちん』 トルストイ・原作、かすや昌宏・絵、渡洋子・文 至光社 1981-82
■車窓よりみた日本の植物』現代教養文庫324 藤井常男 昭和36年
古い本である。懐かしい肌色に赤のラインの入った特急「こだま」号が表紙を飾っている。 黄ばんだグラシン紙が丁寧にかかったこの本をめくっていくと、セピア色になりつつあるモノクロの写真が多々ある。そして、最後の頁にエンピツで記名がしてあった。
ローマ字で、
1961.6.1 at Hokudai Seikyo Gakusei-Shobo
と書いてある。 その下には、きれいな筆記体で持ち主の記名がしてあった。
1961年はこの本の出た昭和36年であり、つまり発売されてすぐに買われたらしい。北海道大学生協でとあるが、私の父が北大の出身なので、ちょっと興味がわいた。
そして、やおら筆記体のサインを読んでみると、なんと!それは私が新卒で就職したときの上司の名前であった。氏は確かに父の後輩にあたると聞いていたので、まず間違いはない。
なんという巡り会わせだろう。昨年私が冬に病臥し、そこで途絶えているのだが、つい一昨年までは年賀状のやり取りもしていた方である。
現在鎌倉の方にお住まいの氏の本と、よりにもよってこの日々変動の激しい「ささま」書店の店先で出会えるとは!
このエンピツのサインが消されることなく、46年の歳月を経て、今私のてもとにあるのだ。この奇跡にも近いこの巡り合いにすっかり感動した。
この本のことは内緒にして、大事にしようと思う。 こういう出会いもあるわけだから、時に苦々しく思うこともあるサインも、古本の魅力の一部にちがいない。