otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

めぐりあい

一日おきで風のある春である。
昨日のこと、風のなか名残のサクラの下を荻窪あんさんぶるまで、自転車でひとっ走り。
ボランティアグループの会計監査の立会いと庶務の引継ぎなど。
午前中に終わらして、さてちょうど「ささま」が開く時間!


久しぶりだ。隣町なのに、隣街すぎて?案外来られないものだ。
12:30ごろ着いたら、もう均一台は男性諸君でにぎわっていた。
ささまの均一台にはなんとなく緊張感がある。同じ本に手を出してしまったり、本に見入ってほかの人に接触したりする。私は、空いているところ目指してふらふらと移動するも、かごに数冊入れたところで、この緊張感に疲れて、中へ。

ささまの開いたばかりの店内は、棚がしゃきっとしていていい。

■車窓よりみた日本の植物』現代教養文庫324 藤井常男 昭和36年

古い本である。懐かしい肌色に赤のラインの入った特急「こだま」号が表紙を飾っている。 黄ばんだグラシン紙が丁寧にかかったこの本をめくっていくと、セピア色になりつつあるモノクロの写真が多々ある。そして、最後の頁にエンピツで記名がしてあった。
ローマ字で、
 1961.6.1 at Hokudai Seikyo Gakusei-Shobo
と書いてある。 その下には、きれいな筆記体で持ち主の記名がしてあった。

1961年はこの本の出た昭和36年であり、つまり発売されてすぐに買われたらしい。北海道大学生協でとあるが、私の父が北大の出身なので、ちょっと興味がわいた。

そして、やおら筆記体のサインを読んでみると、なんと!それは私が新卒で就職したときの上司の名前であった。氏は確かに父の後輩にあたると聞いていたので、まず間違いはない。

なんという巡り会わせだろう。昨年私が冬に病臥し、そこで途絶えているのだが、つい一昨年までは年賀状のやり取りもしていた方である。

現在鎌倉の方にお住まいの氏の本と、よりにもよってこの日々変動の激しい「ささま」書店の店先で出会えるとは!
このエンピツのサインが消されることなく、46年の歳月を経て、今私のてもとにあるのだ。この奇跡にも近いこの巡り合いにすっかり感動した。
この本のことは内緒にして、大事にしようと思う。 こういう出会いもあるわけだから、時に苦々しく思うこともあるサインも、古本の魅力の一部にちがいない。