otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

贅沢な下見

otobokecat2007-06-02

R少年を学校に送り出して、私もすぐに出かける。初夏の日差しがまぶしい。東京駅で番頭N氏の好きそうな赤飯弁当と、私の車中の珈琲を買い、今日は自由席にしたためいつもより早めにホームへ上がる。三号車の一番前に並ぶ。いつものごとく9:48発なのに43分ごろに清掃が終わりドアが開く。乗り換え時間がないので、二列目の窓側に座った。空席はまだあった状態で出発。
先週高崎に行く途中みた麦は、いっそう黄金色になりまだそこにあった。一方、田植えの済んだばかりの水田の水が光っていたが、苗がまだ小さすぎて緑にみえない、同じところを走っているわけだが、高さとスピードが違うと印象はちがうものだ。大宮で隣の席にも人が座り、ほとんど満席に。この電車は高崎に止まらないので、大宮の次は軽井沢。
軽井沢ではかなりの人が降りたが、乗り換えたしなの鉄道はがらがらだった。信濃追分駅でN氏に拾ってもらい、店へ。開店準備をしていたら、追分にある練馬区の保養所に到着した明日の野鳥観察講師の谷口さんから連絡あり、今から歩いていくとのこと。店にこられて早速明日の野鳥観察会の下見のお供。まずは腹ごしらえ。ごんざさんのテラスで定食をいただく。この定食はメインは日替わりで、野菜の小皿がいろいろ付いていて、食前酒の梅酒と食後のお煎茶とデザートが付く。器も手ひねりで溶岩みたいで、お盆も木製となかなか個性の或る定食なり。
食事が届くまでは、ベランダで鳥観察をはじめるところが普通とは違う。見ると私以外の三人はすでに首から双眼鏡がぶら下がっているのには恐れ入った。近くにシジュウカラの巣があるらしく、えさをくわえた親鳥が足しげく枝に止まりまわりを警戒しながら巣箱へえさを運んでいる。
食後に、骨董「時幻さん」、工芸店「寿美や」に寄って、いざ観察会下見は仙洞寺から。山門で早速キセキレイの鮮やかな黄色を拝むことが出来る。墓地の裏手から、文学散歩道〜測候所〜浅間神社と歩く。つつましい佇まいのオドリコソウが群生していた。マイヅルソウがハートの葉っぱに白い小花で可憐。カルイザワテンナンショウが茂みの中で怪しく首をもたげていた。
堀辰雄記念館の前で、移築されていた本陣裏門を見ていたら、地元のボランティアガイドをしている小室老人に声をかけていただき、ご親切にいろいろ追分案内をしていただく。
・堀邸の入り口のもみじの並木は室生犀星氏の薦めによるものだった。
・大黒屋(いまはササクラさんの駐車場)での追分戦争話。
・石垣の切積みと乱積みのこと。
・昔あったお寺のこと。その修行で石尊山の座禅窟まで上っていたこと、当時はいまの昇進橋は精進橋といわれていた。
・油屋旅館の再建のときの文人五人組サインの話など非常に興味深いものだった。
こんこんと水が沸くご膳水の周りはこれから黄菖蒲が咲かんとしていた。そのすぐ近くに元油屋の石垣が苔むしていた。
土曜日の午後とは思えぬ静けさに、東京から見えた三人は満足されていたみたいだが、私はこれでいいんだろうかと工芸店のSさんと顔を見合わせる。ついそこの新軽井沢はかなり混雑していたがなあ。
店に戻り、ブックカフェで寛いでいただいていたら、なんと池の壁でシジュウカラが営巣していて、見ると頻繁に出入りしてえさを運んでいる様子。休んでおられる間にもこういったものを見つけてしまうのはさすがだ。その様子をカラスが高い栗の木から伺っていた。幼鳥がうまく飛べないときを狙って襲い掛かるつもりなのか。シビアな自然である。