otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

新たな出会い


■『ぼくの庭ができたよ』ゲルダ・ミューラー作 ささきたづこ 訳 文化出版局  1989/02
『ぼくの庭ができたよ』という絵本に出くわし、いっぺんでこの画家のファンになった。デリケートな表現は、どことなくパリ在住の市川里美のタッチに似ている。
淡々と日々の生活を描いているが、実にさまざまなことが詰まっている、玉手箱のような絵本。ベンジャミンとカロリーネ兄妹が越してきて、荒れ放題の庭を両親と少しずつ手入れしていくストーリー。近所に住む車椅子のルーカス少年との交流も始まる。季節の流れの中に植物、鳥や昆虫、園芸の道具、生活の知恵などが散りばめられている。中でも、りんごの木が少年に話をしてくれるくだりは、ぞくっとするほど美しい。「庭」という存在が、こどもにとって、家庭の次に触れる初めての「外の社会」として描かれている。
(余談;この作家のものでは『ゆきのひのおくりもの』がパロル舎から2003年に出ている様だが、この題名に聞き覚えがあるが検索しても見当たらない、気のせいか。)是非他の作品も見てみたい。

東京では、皆既月食の赤い月を見ることはできなかったが、久々の激しい雷雨があった。
雨が上がると、あたりの空気は冷気に変わっていた。虫の声が闇に響く。
ようやく一枚ページはめくられた。