otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

おはなしの蝋燭

教文館ナルニア国から2月3月のイベントのお知らせが届いた。

石井桃子さんが荻窪の自宅で家庭文庫を開かれてから今年で50年めにあたり、それに因み「かつら文庫の50年」記念展示会が教文館ナルニアホールである。東京子ども図書館主催の会もあるとのこと。

以下、お知らせからそのまま一部引用。それぞれに申し込み方法があるので、詳細は各自チェックしてください。→http://www.kyobunkwan.co.jp/Narunia/index.html  

かつら文庫の50年の歩みを、当時文庫に通った子どもたち
  の“証言”も交え、その時々の写真や資料でたどります。また、
  開設当時、子どもたちに人気があり、今も読み継がれている
  作品も展示いたします。

 ◎店内フェア “かつら文庫の人気本”
  かつら文庫の子どもたちに人気の本には、こんなものがあります!
  現在も入手可能な書籍を一堂に集め、展示販売いたします。

 ◎阿川佐和子氏講演会 “かつら文庫の思い出”
   日時:2008年3月7日(金) 午後2時〜3時半
   場所:教文館9階 ウェンライトホール
   定員:100名
   参加費:1000円
 

 ◎(財)東京子ども図書館主催:「かつら文庫の50年」記念の集いのお知らせ
   日時:2008年3月5日(水) 午後1時〜3時半
   場所:有楽町朝日ホール
   会費:賛助会員3000円/一般3500円
   ※お申し込み方法ほか、詳細は東京子ども図書館にお問い合わせください。
   電話 03−3565−7711

戦後の混乱がようやく落ち着いてきたとはいえ、世の中が専ら経済復興に躍起になっていた頃、公共の図書館などの整備はまだまだ遅れていた。そんな時代に、自宅の一室を開放して地域の子供たちに本を読む場を作る活動、つまり家庭文庫は生まれた。その趣旨に賛同して世田谷でささやかにT文庫を開いたのが私の祖母である。

今は祖母もその文庫もないが、東京子ども図書館がその火種を守って下さっている。「かつら文庫」もまた東京子ども図書館の傘下にあり、こうやってその50年の歩みを公開できることはなんて素晴らしいことだろう。

私は父の転勤で東京にはいなかったので、幼い子供の頃には文庫へ通っておらず、成長してからの記憶しかない。
T文庫は毎週土曜日の午後にだけ開いていた。東京子ども図書館から本のことを勉強したお姉さんが通ってくださっていた。おはなしの時間が始まる時にはちりりと鈴が鳴り、こども達が書架のある部屋からじゅうたんをひいた玄関ホールに移動し、そして一本の蝋燭が灯されるとお話の時間がはじまる。
私達の家族はドア一枚こちら側で、こども達の気配をいつも感じながら、土曜日の午後をちょっと息をつめて過ごしていた。
文庫とはいっても、図書館のように静まり返っているのではなく、終始こどもたちの声が賑やかだったが、お話が始まる前に訪れる一瞬の静けさを今もふと思い出す。 この蝋燭の火を何時までも守りたい。


三月ひなのつき 石井桃子作、朝倉摂
ページ数:96、 サイズ: 22X20cm 、
初版年月日:1963年12月01日、
ISBNコード: 978-4-8340-0018-4