otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

同じ時代に生きる

日和9月号ができて送られてきました。今回の巻頭は『長野県のフェスティバル現在形』で、そのまたトップバッターは高遠ブックフェスティバルが。同じ頃にできた高遠本の家が、ビッグな催し物にチャレンジ。本が町の活性化につながるのは凄いなぁ、しかも沢山ののボランティアが名乗りを上げているようです。軽井沢でも何時の日にか、本のイベントをやってみたいですが夢のまた夢・・・。
今まさにトップシーズンで肥大化?しているこの町のなかで思うのは、今はともかくこの店を粛々と経営するのが当面の我らのミッションかと。
それでも石の上にも三年。今日のお客様のなかには、開店時から来て下さっている方が何人もみえ、有り難く思います。盆の休日直前の平日ということで、今の時期に見えるのは本当の追分人かもしれません。「今年も来ました」というリピーターの方を裏切らない店でいたいと思います。
さて日和文庫の本棚には、新刊本より以前もブログに取り上げた『堀内誠一旅と絵本とデザインと』(コロナブックス)と、絵本の定番『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン作、石井桃子訳(岩波書店)を入れました。実はこの8月は1909年8月30日生まれのバートンの生誕100年に当たります。『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』は長男のために、第2作『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』は次男のために、そして第4作の『ちいさいおうち』は長女のために描かれたといわれています。バートンの本はどの作品も古典的名著で、日本でも石井桃子を始め、村岡花子瀬田貞二など名だたる訳者が訳を担当し、現在でも発行され続けています。『ちいさいおうち』はコールデコット賞を受賞しています。この本はまさしく「絵本の中の絵本」だと私は思っています。
先年101歳で亡くなった石井桃子が1907年生まれで、バートンとは同世代でした。バートンが1964年春来日した際には、石井桃子のかつら文庫を訪問して、壁に貼った大きな紙に恐竜の絵を書いてみせたそうです。きっと1962年に『せいめいのれきし』(石井桃子訳、岩波書店【邦訳は1964】) を書いたからでしょうね。
どの絵本にも自然破壊や文明崇拝への警鐘のようなものが底辺に織り込まれています。
今年生誕100年というと太宰治で、バートンと同じ1909年生まれ。意外にも石井桃子太宰治にも接点はあったということです。
堀内誠一石井桃子も同じ時代を共有していました。世田谷文学館の展示物のなかに堀内誠一石井桃子に宛てた絵手紙がありましたよ。なんとも刺激的な同世代の人たちですね。
堀内誠一 (コロナ・ブックス) ちいさいおうち 走れメロス (新潮文庫)