otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

小さくて大きな世界

 所属している環境団体で、昆虫写真家の海野和男さんをお招きして、デジタル写真講演とカメラ講座を開催した。海野さんは昨年に続き二回目だが、本当にお忙しい方で、今日もホンジュラスからお帰りになったばかりだった。アトリエは小諸だから、この温度差をよくクリアしておられる。(今日は区民参加者45名。スタッフ10名。)

 海野さんのWEBの「小諸日記」をいつも楽しく拝見しているが、小さな虫たちの世界をカメラを通して覗いてみると、いかに我々がいつもいろいろな細かいことを見落としているかを思い知る。デジタルカメラは接写がマクロボタンひとつで素人でも出来るので、そのカメラの力に助けてもらって、見逃しているものを見つけることができる。

 今日はリコーにカメラ20台を拝借して、このビルの屋上の緑地で試し撮りもして、それをすぐパソコンに取り込んでの合評会もあったが、なかなかの力作が多々あった。
 植物だけの写真より、そこに一匹のテントウムシや、イモムシが入るだけで、急に活きた写真になるのが不思議だった。
 講演のなかでは、海野さんのビデオや、写真を見せていただいたが、卵を産みに水面に近づいてきた赤とんぼのカップルに水面から跳躍して食いつくカエルとか、樹液に集まった虫たちの中で、角を持ったカブトムシが、玉虫色のカナブンを投げ飛ばすコマ送りのフィルムは、その凄さに恐れおののいてしまった。この動きに鳥獣戯画を思い出した。
 実際には刹那の出来事だけれど、こうやってカメラの目を通すと、どんなドラマよりドラマチック(ってなんだろうこの稚拙な表現!)だった。この瞬間を撮るために水際で頑張っていた海野さんの忍耐も凄いけれど、こういった瞬間に出会えるからこそ、カメラを構えていられるのだろう。
 
 海野さんの講演の中の写真で興味深かったのは、特殊なレンズを通して撮影したもので、
それは、蝶の目からみると植物などはどのように見えるかというものだった。なんと、蜜の在り処はくっきりそれをあらわす色が着いて見えるのだとか。カラフルな花の色も蝶の目には淡色に見え、むしろめしべおしべのある花の中央にしっかり色がついて見えるのだ。
 看板だらけの都会では、なかなか目的のものが探せない。人間社会では過多な情報に人は溺れている。人間にとっては色とりどりのお花畑も、蝶にとっては大事な生活の場である。
必要なものだけはっきり識別できるようになっている。なんとなく人間の世界の方がまやかしの愚かな世界に見えてくる。

 奥本大二郎さんや、養老先生といった各界の大物のなかに、今でも「昆虫少年」である人は結構いる。どうも男の人に、昆虫好きは多いように思う。

■おまけ:この日の講演会について、早速海野さんの「小諸日記」に取り上げていただいた。感謝!(http://eco.goo.ne.jp/nature/unno/diary/200512/1134307624.html