otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

『ブックカフェものがたり』を読んだ。

『ブックカフェものがたり』(幻戯書房/矢部智子・今井京助ほか) 2005(¥1900+税)

 まあ、さまざまな店があるものだなあ。私はまだ自分の行きつけの「ブックカフェ」を持たないけれど、この本に掲載されている「ブックカフェ」のどれもが、本のこれから生きていく道だと思えば、「本」にも明るい将来はあるというわけで、嬉しいではないか。

 町の新刊本屋さんの経営は衰退の危機に瀕しているとはいえ、一方で今まで以上に多様な「本のある暮らし」がされるようになっていることは、私も身の回りで実感できる。たとえば大型のチェーンの古本屋さんが登場し、買うだけでなく売ることも身近になった。一方WEB上でも本の購入が可能になり、自宅にいながらにして本が購入できるようになった。また漫画喫茶なるものも生まれた。本屋さんも従来の「町の本屋さん」とは違う厳選された本を置く本屋さんとか、音楽の流れる店内のつくりにこだわりのあるの古本やさんとか、そしてお茶も飲める本屋さん=ブックカフェも現れ、ついにこのような一冊の本を生むところまできたのだ。

 従来の本のある暮らしといえば、通勤・通学途中に車内で本を読むとか、図書館の大きな机で読む。あるいは寝しなに布団の中で本を読むといったところだったのが、ついに喫茶をしながら本をめくる時代になってきたということは、つまり「本」がより生活の中へはりだしてきたということになり、これは喜ばしいことだ。
 ただ、このことはより専門店化してきたということにもなるんだろう。スペースの都合もあって、またオーナーの好みで、特定の分野の本だけを扱うようになってきたわけで、児童書、文庫本から参考書まで何でもある本屋さんとは正反対だ。それぞれの店が、試行錯誤の中でオーナーの好みの店づくり、棚作りされており、つまり「ブックカフェ」には二つとして同じものがないということになる。全てが個性派なのだ。しいて共通点を見出すならば、それぞれが「本にかかわるオリジナルティのある心地のいい空間を提供することを目指している」ということ。前例が無いこともあって、どこもオーナーの工夫の結晶だ。

 この本には、新しい店:結晶を生み出す苦労話がいろいろ載せられていて、読んでいるうちに全ての店を覗きに行きたくなってくる。さらに巻末には全国のカフェの一覧も着いている。思わず自分の住んでいる町をチェック!
 後半には石川あき子氏の「開業講座」、梶村陽一氏の「悪戦苦闘の記録」があり、「ブックカフェ」の開店を目指している人にとってもいろいろな意味で参考になる。

 小ぶりな本だけれども、実はなかなか盛り沢山な一冊である。願わくばカフェのメニュウの一部と、置いてある本のリストなんぞが付いていたら、より店の個性がはっきりして、ガイドとしては完璧なのだけれど…、やはりそれは企業秘密?なのでしょうね。

 危うく生まれ損ねたものの、幸い漸く日の目を見ることのできたこの本が「本」の世界にとって一筋の光明となるといいけど。