春は陽炎…
連休中に追分へ。
向こうはまだようやく春になったばかりだった。
実は、100歳まであと少しというところで、昨秋に亡くなった祖母の分骨のために行ったのだった。
ここは冬の寒さがことのほか厳しいので、今まで待っていたのであった。
夏には鬱蒼となる泉洞寺の裏の墓地も、春浅い今は、地面までたっぷり日差しが届き明るく、墓の脇の陽だまりには、薄紫色のタチツボスミレがひっそりと咲いていた。
折から連休の最中で軽井沢は大混雑。
その中をここまで来るのは大変だったけれど、よい季節にお墓に入れてあげることができた。
町中の喧騒とは裏腹に、ここでは野鳥の声しかしない。これからも墓地にはこの季節に来るのが良い。
法要が終わって、境内のさかりの桜などを愛で、山門を出たところの寺の掲示板に、
良寛の
「散る桜 残る桜も 散る桜」
という俳句が綺麗な書で書いてあり、しばしこの句の前で立ち止った私だった。結びには「良寛さん」と書かれてあった。
ふと、しろい道を眺めながら、私はこの墓には一緒に入れないのだな、と思ったら、目前に陽炎が立ったような気がした。
帰京していつもの日々が始まった。
たまった家事の合間にパソコンを開くと、ほぼ日(デリバリー版)が届いていた。みると「ダーリンコラム」にこの句が取り上げられていた。しかも、日付は分骨式と同じ5月4日だったので、過ぎたことだが書くことにした。