otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

ヒアシンス・ハウスに憧れて

otobokecat2006-06-21

 所用があってひとっ走り日帰りで追分へ。雨の東京を出立し、高原は着いたときはかなり霧も巻いていたが、途中は薄日も差して信濃追分駅へ辿り着くまではついぞ雨には降られなかったので助かった。

 15:06追分発に乗るために、追分宿から駅舎まで、いつもより時間に余裕を見てぶらぶらと歩く。(なにしろ一時間に一本なので、結局いつもこの電車になる)高原の村で出会った人といえば畑の草を刈っている人と、別荘の立替工事をしている人などで、平日の高原にはろくに人もいない。あっ、番犬にほえられたけど、つまりそんなときにうろついている私自身が怪しい…わけで。でも人目もないのをいいことに、あちこちに立ち止って写真を撮ることができた。
 オオミズアオの怪しい白さ、名残のミヤマウグイスカグラの赤い実、ハナイカダの実のこども、草むらにすくっと咲くアヤメ…など。

 「■今日の一枚の写真」は、前々から気になっていた一坪ハウスのような別荘。(家主さん申し訳ありません、勝手に撮影して。)立原道造のヒアシンス・ハウス(風信子荘)のようである。むしろ大きさから言うと、かつて油屋旅館の裏手の御影用水沿いに点在していた大学【;帝大】受験者用のバンガローに近い。この中で勉強もいいが、こういった離れで本を読んだり音楽を聴いたり、好き勝手に過ごすのは最高!食事やお風呂のときだけは母屋に行くのだ。トイレは付いているのかしら?まあ主婦は基本的には母屋の住人なんだろう。だから尚のこと憧れるなあ。(いつか、ヒアシンスハウスの建つ別所沼湖畔にも行ってみたいものだ。)

 追分駅ではちょうど「あたらさん」の編集長さんが戸口にいらしたので、12日に出たばかりの「あたらさん3号」を買って、定刻に到着したしなの鉄道のがらんと空いた車内で読みながら帰ってくる。「ぐりとぐら」の中川李枝子さんの記事が載っていた。中川さんは石井桃子さんの追分の別荘にかつてご家族でいらしていた。その石井さんは、お元気だが今はホームに入られており、残念ながら昨夏から追分の「文学の小径」に面した別荘にはみえていない。

 唐突な感じが当初はしたが、3号ともなるとしだいに「あたらさん」らしさがでてきて、合わせてこの無人駅の編集室もなかなかの人気である。先ほども地元のご婦人が、3号を求めに見えた際にいろいろ雑談などしていた模様。トレードマークの太陽の顔が土入り口の表に出ていると、だれでも訪問OKということなのだとか。開かれた編集室である。


■今日の一冊:『笑坂』後藤明生 筑摩書房 1977