otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

懐中電灯をお守りに

otobokecat2006-09-06

残工事の立会いに、信州へ一泊出かけてきた。平日でないとできないこともあるのだ。

夕食の用意をしておいて、部活から戻った息子と入れ違いに出て東京駅に向かい、新幹線に飛び乗って、薄ら寒い軽井沢に着いたのが夜10時半近く。(この新幹線は上野にも止まらず、大宮の次がもう軽井沢で、わずか「61分」という最速列車だった。)

軽井沢駅からしなの鉄道に一駅だけのる。これが最終列車と聞くと緊張する。軽井沢からだとタクシー代が高くつくし、最寄のしなの追分駅にはこの時間もうタクシーはいない。いつもは中軽井沢駅にタクシーが何台も客待ちをしているので、ここで手を打つことに。ところがいざ中軽井沢で降りて改札口を抜けると、タクシーは僅か3台だった!私は二人目だったのでセーフ!(割り増し料金となっていたが、この際走ってくれているだけで有難い)。まあ、こんな時間に利用する人は、迎えに来てもらうとか、自分でパーク&ライドにしているんだろうが。

運転手さん曰く、避暑のシーズンも終わりると、駅前にはもうタクシーはいないのだとか。気をつけなければ。

10分ほどで真っ暗な山中に到着。親切な運転手さんは、家に入るまで見届けましょうかと言ってくれる。そこで私はタクシーの中で、ハンドバックから家の鍵と懐中電燈を取り出し、闇の中へ突進する。無事玄関に到着し、タクシーは走り去った。

軽井沢で19℃だったが、追分は17℃だった。


翌朝、朝からいろいろな工事の方が次々に見えることになっているので、早起きをして、東京の目覚ましコールをして、身支度をして山を歩いて降りる。店は15分ほど下ったところに有る。素晴しい快晴。気持ちいい。

約束の9時より早いが、すでに工務店のMさんらが来ている。やまの朝は早い。

建築士のM氏もお弁当持参で来て下さる。

まず、薪ストーブを入れるために、壁に石を貼る工事。南牧(なんもく)村のみどりがった灰色の椚(くぬぎ)石が入った。石を決められた空間にきちっとはまるように削ったりしながら調節していくが、何分重〜い石である。それを真っ直ぐに、ミリ単位で切るという作業は、まさに職人芸。この石は、苦を抜く(→くぬぎ)という言葉あわせで、縁起もいいとのことである。ストーブの火のゆらぎは、人の心を落ち着かせてくれるが、縁起のいい石が温まって、そこからの放射熱を発散して、ここが一層よい空間になってくれることを期待したい。

それから、シェードの取り付けとピクチャレールの取り付けをインテリアRioさんに。障子のところがほとんどなので、シェードをつける窓は少ないが、何回も打合せをして、用途にあったものを選定した。布にこだわこだわりを持つKさんを信頼してお願いしたが、窓の外の木々の陰まで意識した素敵な窓ができた。カウンターの後ろの高窓は、梨地のガラスなのだが、思いのほか西日が入りまぶしいので、シングルガーゼをシンプルにテンションポールに通してみる。反物でみると何の変哲もないガーゼだが、洗ってみるといい感じに縮みが出た。Kさんによると、この洗う作業ひとつも水にも気を配らないと、布が変色したりするらしい。

早速、この西の小窓のカーテンのことがRioさんのブログに掲載されていた。
http://www.interior-rio.com/diary.html
陽の入り方で、様々な模様が浮かび上がるキャンバスのような窓。

ストーブの部屋には、鎖を引っ張ると上に畳まれていくタイプのシェードを着ける。素材は合繊なので洗うことができる。一見障子紙のような感じだが、布の持つやわらかさが木の家に変化をつけて、漆喰の壁ともいい相性。

建具やさん、浄化槽やさん、水道工事さんも次々に見える。
今日は開店はしないが、裏から人の出入りの多い一日となった。

石の入った後での、端の木工処理が終わったのが、18:00過ぎだった。なにしろ一時間に一本のしなの鉄道なので、時刻表をめくり19:30に乗るべく、19:00に出て歩いていくことにする。ここから駅まで25分ほど徒歩でかかる。その後、20:02の新幹線に接続しているはず。

開け放った窓を閉め、戸締りをして、セコムをかけて外に出る。お守りの懐中電灯の在り処を確認してから歩き始める。7時でももう真っ暗なのにちょっと驚いた。目がなれないうちはあまりに暗いので足がすくみ、早々にごそごそ懐中電灯を取り出して点ける。ときおり車が私を大きく避けていく。

人っ子一人いない追分駅に着いた。自動販売機の灯りもちょっと嬉しく感じてしまう。

蛍光灯のともる駅舎の壁に、ちょっとクラシックな周辺地図(写真)
ホームではエンマコオロギの声が迎えてくれた。怖くはないがやがて真っ暗な闇の中から一筋の明かりがこちらに向かって伸びてくるのが見えて、やはりほっとする。アニメのトトロのバスを待つシーンを思い出す。

定刻の到着だ。学校や勤め帰りらしい若い人が10人ばかり降り、車掌さんが一人ひとりからキップを受け取る。ここから乗ったのは私一人だった。