otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

半世紀前を歩きつづけた女達の後ろ姿

 ■教文館脇の入り口にて

銀座・教文館子どもの本のみせナルニア国へ「石井桃子さん100歳おめでとう」の展示をみに母とKさんと三人で出かけた。久しぶりの銀座だ。

ナルニアホールに入ると、天井まで届くような桃の枝が活けてあるのがまず目に入った。100年前に三月に生まれた女の子に「桃子」と名づけた親の心を思う。とかく桜がもてはやされるが、中国では桃・李は豊かさの象徴としてしばしば用いられるし、桃色は心温まる色だ。2月14日よりも桃の節句を忘れないで欲しいなとふと…。

石井さんの素敵な刺繍のセーター姿の近影はとても100歳にはみえない。年譜といままでの全作品の展示があった。(残念ながら展示はカラーコピーによるもので、現物ではなかったが。)年代順に並んだ作品の最後ーつまり現在においての最新刊は2004年6月『エルシー・ピドックゆめでなわとびをする』であり、つまり当時97歳だった石井さんが109歳でなわとびをするエルシーのことを書いておられたわけで、凡人にはとてもその心境はわからないけれど、きっと「まだまだ上には上がいるし、」と石井さんはさらりと思っておられたのではないだろうか?と勝手に思ったりした。

ホールの一番奥には深沢紅子さんの書いた大きな油絵が飾ってあったが、なんと石井さんは猫を抱いていた。以前犬派かな?と思ったりしたが、どうもそうではなかった模様。

年譜の中に祖母の名を見つけた。村岡花子さんと石井さんらと「家庭文庫研究会」を立ち上げたのだった。それがちょうど私の生まれた年であり、そのとき祖母と石井さんは50歳であったのだ。この50年でずいぶん日本の子どもと子どもの本をとりまく環境は変わったが、そのことをずっと見守ってきた石井さん。

年譜の横の色紙には、ちょっと節のある字で、「本は友だち、一生の友だち…」という文章が書かれていた。どことなくその字が祖母の字に似ていない?と言ったら、母もうなずいていた。

展示を見た後で三人とも作品の人気投票にも参加してきた。結果が楽しみである。

教文館ナルニア国には絵本・児童書が相当集められている。日頃、古本ばかりみているので、出来立てのピカピカの本ばかりが並んでいると、綺麗さと値段の高さに、なんだか目がくらんでしまうという情けなさであった。(催しは6階のナルニアホールで3月15日まで)