otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

ワンダフル・ライフ


「かつら文庫の50年」記念の集いが、財団法人東京子ども図書館主催で、有楽町の朝日ホールで執り行われた。700人余の参加者が集った大規模なものになった。

「かつら文庫」って何?と云うそこのあなた!石井桃子さんが51の時に荻窪ではじめらた自宅の一室を開放しておられた家庭文庫で、3月1日がその文庫のお誕生日なのだ。

兄弟文庫の「つちや文庫」の末裔としてご招待を受けて、はせ参じた。かつて文庫のお姉さんをやっていらした方々も50年ともなるともう立派なお年だが、何せ101歳間近な石井桃子さんがお達者なので、皆おのずと背筋が伸びる。先駆者が長生きすると後輩に渇が入るが、それもまたご苦労の多いことかも知れぬ。
第一部は、かつての子供たちによる文庫の思い出の数々が映像とともに。皮切りは本の蟲であった阿川尚之さんと、じゃじゃ馬佐和子嬢による兄妹漫才ならぬトークで、佐和子さんの絶妙な突っ込みにしばしば会場の笑いが巻き起こった。尚之さんは、「かつら文庫」第一日目の初めの一人!だったという。(何のことはない、お父さん=阿川宏之氏が一時間時間を間違えたからとのこと)
その後の五人の皆さんのお話もどれもとても良く、やはり「かつら文庫」に通いつめた子は文章力が違うと思ったしだい。どなたのお話を聞いてみても、文庫ではぐくまれた「もの」が、成人になってから様々な形で花開いたということであった。みんなが本に尾没頭していたわけではなく、犬のデュークに会い行った子もいるし、庭で遊んでばかりの子もいたはずだが、皆楽しさを感じて、だれに促されるということも無く、自分で来ていた。
本読みを決して無理強いをせず、さりげなく橋渡しはしても、基本的には常に自主性を重んじていたというくだりは、読書だけではなく、子供に関わる際にはいつも思い出されるべき事だなと思った。

第二部は、松岡享子さんによる「本と子どもに心を寄せる人々の長い流れのなかで」という長いタイトルの講演。なかなかの熱演で、下調べが相当大変だったことだろう。

夜はお祝いの会が国際交流会館であった。石井さんと「かつら文庫」に縁の有る方々が多数集まり、歴代のお姉さん達による裏話などが楽しかった。文庫にきていた○○ちゃんが、既に皆立派な50代。自分のルーツに思いを寄せるいい機会ともなった。面白かったのは、案外建物のことなど記憶違いをしていることが多いということ。文庫は子ども一人ひとりと結びつき、同じ時期に通った子ども達が、他の子のことをさっぱり覚えていないことなど。それそれにとっての「素晴らしい本棚」であったのだった。

最後に、絵本作家のアメリカ人のマーシャ・ブラウンさんが、石井さんに送った言葉が英語日本語訳で披露されたが、そのなかで石井さんの人生は「ワンダフル・ライフ」だともうすぐ90歳になるマーシャ・ブラウンが言っているのが印象的だった。
三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ) ちいさなヒッポ (世界の絵本) スズの兵隊 (大型絵本)
石井さんは今宵はみえなかったが、私には水仙で飾られた会場で、エルシー・ピドックがなわとびをしているように、石井さんがちょっと高い声で歌いながら飛び回っていらしたように感じられた。(この大判の絵本は石井さんの出された最新刊 ケーバーン山で109歳のエルシーが縄跳びで悪い奴らをとっちめる話!)

エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする (大型絵本)

エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする (大型絵本)

参加者が一様ににこやかに穏やかにこのひと時を楽しんでいたのは、きっとそのせいかなと。