otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

山を仰ぐ日々の始まり

otobokecat2008-04-04

昨晩、奇跡的にも西荻の部屋を空っぽにして、峠を上って来ることができた。
沢山の方の援助を受けて成し得ることができた。ごみを持ち帰ってくださったり、不用品・家具をもらってくれたり、昼食を差し入れしてくれたりと、一生、南東に足を向けて寝られない。

実はどうしても私物を捨てきることができず、転居当日に車に乗り切らない分を急遽赤帽さんに頼む羽目に…。宅急便にするには少々数が多かったのだ。当日発送を頼むなど、まるで夜逃げ同然!である。恐れ入っている私に赤帽さんは「赤帽には一週間前に頼むのでさえ早いくらいですから、ご心配なく。たまたま明日空いていたので問題ないです」と言ってくれた。荷物はあっという間にトラックに仕舞われた行った。神様にみえた。

夕方、身の回りのものを車に積んで、部屋の点検を終え、鍵を封筒に入れドアポストに落としたら、なんだかやけにさびしい音がした。
そのままベル公を迎えに行く。このあたりからぐすぐすしていた。動物病院でKさんにこの日も会った。「あら、花粉症?」小学校のPTAで一緒だったが、たまたまKさんの猫が持病もちで毎日夕方通院していたので、何時も滑り込みの私はKさんに出会っていたのだった。最後の最後に会ったのがこのKさんということに。
ベルの籠をひざの上に抱いたまま、車窓からにじんだ灯かりをボーっと見ていた。
ぐすぐす、にゃーにゃー。ベル公のうるささにもこのときばかりは救われた。

おもえば15年も一箇所にいたのは後にも先にも西荻窪だけだった。馴染んでしまって、ここから去ると言うことをこの瞬間まで実感できていなかったのだった。
二時間後涙は止まったが、鼻は不通の窒息状態で2℃の追分に到着。
満天の星空が迎えてくれた。口で息を吸ったら、のどの奥に薪のにおいがした。

部屋に一歩入り愕然。荷物だらけではないか。2月19日に送った箱が手付かずのまま、私を迎えてくれた。ここで我に返った私であった。これがまさに現実だ。

しかし、悪いことばかりではない、翌朝目が覚めてみたら、食堂の窓の向こうに雄大浅間山がどーんとすそ近くまで見える。先の9月の嵐で倒れた国有林の除去作業が三月に終わり、眺めが良くなったのだ。今の時期は空気が澄んでいて、雪が斑に残る山はより近く見える。家から山が見たい、いつかその日が来るのをずっと待っていたのだが、思いがけず実現した。なかなかいい気分である。
俄然このことに気をよくした私は、気持ちよく赤帽さんをお迎えしたのであった。赤帽さんはてきぱきと荷物を運び入れて去っていった。

取り組むべき課題があることはいいことだ、と言うことにしておこう。