otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

都会の空気

otobokecat2008-04-17

古書連の大市があるので、我々にはお呼びではない世界とはいえ、これを口実に都会へ出かけてきた。
平日の朝は道が通勤ラッシュで混雑している。18号線を避けて、発地のほうを回って行く。道の両脇の畑の土の黒さが初々しい。
インターチェンジまでの峠を下る間は、キブシや、アブラチャンなどの黄色い花が枯れた山林に色を添えていた。
上信道に入るとトンネルの入り口は連翹が花盛り。
ここから先は、先週は道路沿いが「花道」だったが、今日はちょっとピークを過ぎていた。今回は遠景の山がうっすら緑の霞がかかり、その中に山桜の薄桃色が織り込まれていた。
所沢で降りてあちこちに寄りながら、武道館わきのパーキングに着いたら、今日はコンサート:「コブクロ」があるからか入れず、奥に止める。科学技術館の脇を抜けて、清水門を出て神保町へ。千鳥が淵の桜は終わったが、北の丸公園ではハナミズキが花びらを天に広げつつあった。羽化する蝶のように。

大市はさすがに大規模。今回は古書界の再生を願ったスローガンが掲げられていた。『古書に光を』
我々は初めてなので今までとの違いはわからないが、さすがに量もかなりのものだし、場の雰囲気はやはり日ごろの市と違い緊迫感があった、否ありすぎて、4階から地下まで見て回ったら目が回ってしまった。準備も大変だったことだろう。
欲しいものもいくつかあったが、どれも売り手の気迫が感じられ、入札したものの到底落札できるとは思えなかった。
全国から古書を扱うプロが集まっているわけで、遠距離ともなれば交通費も荷送代もかかる、となると市への参加は売るほうも買うほうも大勝負である。

今回は一泊したので、少年Rとも食事ができた。いつもの西荻焼肉屋へ行った。
少年Rは、今までろくに家の手伝いなどしてこなかったのに、4月から一気に放り出されたというか、置いていかれたというか、それでも住み慣れた土地でもあり、なんとか頑張っている模様であった。節約して夜は自炊しているらしいので、一緒に食事する?と誘ったら、二つ返事でOKがでた。

神保町から西荻窪まで走り、車を止めた。パーキングから駅まで歩くすがら、二週間前まで住んでいたアパートがある。灯かりのない部屋を横目で見て、ふと仰ぎ見るとそこに見慣れた大欅の木が夜空に向かってそそり立っていた。立派だ。

この地を去ってしまった私には、いまさら何も言える立場ではないけれども、信じたくはない、この樹がなくなるかもしれないということを。