otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

掻き消したい事実

昨日の段階では、東北の地震による惨状は、上空のヘリコプターからの映像では視覚的に凄かったと言うことでしかなく、人間に関わる痛ましさまでは、画面からは伝わってこなかった。

一夜明けて、現場に人が辿り着き、カメラも至近距離に入り、より生々しい現状を目の当たりにしたと同時に、昨日ずっと画面で見ていたあの土石流の中に埋もれた温泉宿に、元同僚が投宿していたらしいということを知らされた。行方不明の宿泊客二人のうちの一人が、私の二年後輩の彼女であった。
仕事のできる彼女は、後輩と言うより、あっという間に抜き去って先輩の如し。甘ったるいところのないシャープなしゃべりが際立ち、研究員と言う職種に相応しい個性を身に着けていた。寿退社は少ない職場だったが、女性が結婚後も仕事を続けていくには様々な壁がある。彼女だけはそれを次々に乗り越えて、仕事を続けながら家庭をもち、子育てさえもクリアして今に至っている稀有な存在だった。

知人が最近会ったときに、栗原市の仕事がとても気に入っていると言っていたそうだ。だからといって地震があった時に現地にいて、よりにもよってあの屋根の下にいたとは。

会議が終わって、なんですぐに帰らなかったの?と問うても、今はむなしいばかり。
テレビから流れてくる確定の事実を、掻き消してしまいたい。
貴女のことだから、「みんな何やってんだか!」とそのあたりから毒気づいて現れるような気が今でもする。
・・・待ってるから。