忘却亭ひっそり
カンゾウが草むらのアクセントになってから10日ほどたつだろうか。色といい形といいやたらに目立つ。
福永武彦の『玩草亭百花譜』(中公文庫)は当店で人気のある本だが、その上巻にカンゾウの絵が二枚ある。ヤブカンゾウは別名ワスレグサともいい、その方がゆかしいと記している。
氏の別荘の周りにやたらと生えていて、山荘を忘却亭と名づけてもいいぐらいだとも書いているが、現在、当店の裏手奥にある福永武彦の別荘は、時々管理の方らしい人が風を通しているが、ほとんど使われていないようで、周りに木々も茂り林の中になり、もう、草むらが好きなカンゾウは見当たらない。私はこの忘却亭の前を通って店番に行くのだ。
■バッタが見えますか?
ヤブカンゾウの次はユウスゲが咲く頃だ。
おとつい、林道脇にゆうすげが一輪咲いていたのを夕方みつけたが、カメラを持って昨日行ったら、もうどこにあったか、見つからない。本当にはかない花だ。かたちもつつましく、色もレモンイエローで草むらにそっと隠れている。
追分の寿美屋工芸店の包装紙は、深沢紅子さんの植物画に堀多恵子さんの筆による立原道造の詩があしらってある素敵なものだが、この花がマツムシソウとユウスゲだ。
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