otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

本の取り持つ縁

otobokecat2008-08-28

やっぱり雨だった。中学生の遠足はどうなっただろう?
早番で店へ行く。雨なので、外の正直文庫はお休み。いつもは開け放つ窓も、今日は玄関と裏のみ。一時過ぎまで人影は無い。その後来たお客さんは、石井桃子さんの本数冊とともに絵本のコーナーから、一冊の赤い本を大事そうに抱えてレジへみえた。この本にここで出会えるとは思いも寄らなかったと興奮気味に。その本とは、
『猫と悪魔』ジェイムズ・ジョイス 丸谷才一小学館 76年初版
HPにも、日本の古本屋にも載せてあったが、今日までオーダーが入らず棚にあった。カバーにヤブレ箇所があったが、状態はおおむね良好で、小さいお客様にいじられないように高いところに置いてあったのだった。いい嫁ぎ先ができてよかった。

そのお客様が、児童文庫を開いているとおっしゃったので、私の祖母もでしたという話になった。その話を耳にした店内の別のお客様が、なんとその世田谷区の文庫の近くに今でも住んでおられ、同行している娘さんが在りし日の文庫に行っていたという。追分には山荘があるとのことだった。あら、まあ。
文庫にお話の部屋が有りましたね、とおっしゃるので、「あれは玄関ホールでした。」と言ったら驚いた様子。お話の時間になると、図書室から灯かりを消した隣の暗い部屋に子どもたちを誘導して、ろうそくの火をともしてから、お話の時間は始まった。みな本とろうそくの火に集中していたので、そこが玄関だとは気が付かなかったのだろう。
『お話のろうそく』は東京子ども図書館のベストセラーだ。
あの赤い本が捜し求めていた人の手に渡ることによってできた会話の広がりだった。話は水の輪のように広がっていく。輪と輪が触れ合ったりもする。水溜りに落ちる雨粒のように。店売りをする醍醐味を体感する瞬間だ。

本を介して、様々なご縁が広がっていくといえば、月曜日にいらしたたけうま書房さんご夫妻とのご縁も本がらみ。西荻ブックマークで岡崎武志さんのトークショーがあったとき、わざわざ遠方から見えて打ち上げにも参加された時に、私がずうずうしく店のご案内をさせていただいたのがご縁の最初だった。そのチラシをみて昨夏お越し頂き、そのときに先輩風を吹かせて一箱古本市をお勧めしたのだった。たけうまさんは秋の古本市に参加され、すぐに本領発揮で賞も取られた。翌春もまた参加された由。このたびは高遠に行かれた帰りに寄ってくださった。薄ら寒い日で、ピンクのマフラーがお似合いのお客様がいるなと思ったら、それがたけうま奥さんだった。
お買い上げの本はあの「しのばずくんトートバッグ」にしまわれた。なんとも正しい古本道であります。遠路有難うございました。