凍った月の涙
「満月は大霜」というらしいが、ついに今朝は零下(−1.4℃)となった。晴天のまま夜が明けて、放射冷却により冷え込んだのだろう。もっとも私が起きた頃には、もう霜は融けていたけれど。ベランダの波板には融けた霜が朝陽に光っていた。それをみたせいか、一日中荒井由美の「旅立つ秋」が耳の奥でリフレインしていた。満月だけあっておお泣き?だったか。
今日も快晴。太陽がさんさんと降り注いでくれて、午前中はめずらしく暖かかった。店番をしていたら、カフェ「ごんざ」の旦那さんがバケツをさげてみえ、育てた愛(まな)黒めだかを100匹(あるいはもっと?カウント不能)店の裏の池に放流してくれた。以前から養子縁組の話はできていたのだが、ようやく実現した。
追分といえども今まではそれなりに忙しく、最近さすがに静かになりつつあり、さりとてこれ以上冬に突入すると、水が冷たくなりすぎるという親心で天気のいい日が選ばれたのだろう。
放流されためだかは、元気よく池に散っていった。大小さまざまだったが、小さいのはまだ1cmぐらいしかない。今年生まれた奴なんだと、ごんざさんのめだかに注ぐまなざしの優しかったこと。小さい水槽だとなかなか大きく育たないのだそうだが、ここならその点十分広い。無事冬を越して、春に氷が解けた時に姿をまた見せて欲しい。アオサギにはご用心。フナがいなくなってからは、水面を覗くことも減ったが、これでまた覗く楽しみができた。
連休前の週であり店は静かだが、それなりに様々なお客様がぽつぽつと見える。
10年ぶりに軽井沢を訪れ、以前はなかった当店の出現を喜んで下さった男性は、今は物寂しくなりつつある追分だが、名残の落葉松の黄葉を愛でて、「仙洞寺に紅葉が残っていました」とおっしゃっていた。たぶん山門のもみじだろうなと思う。堀記念館に来た記念にと、新刊本の『立原道造・堀辰雄翻訳集』を購入された。これで仕入れた分はすべて売れた。また入れておかなくては。
- 作者: 立原道造,堀辰雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/08/19
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池波正太郎と藤沢周平を愛読するご婦人も、時折ふらっとみえては、まとめて沢山お買い上げになる。
こういったささやかな出会いがあることが、店番の愉しみだ。
店番を終えて山荘に戻ってきたら、ちょうど東の林の枝の隙間から、今日も丸い大きな月が昇ってくるところだった。