otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

雨粒のソナタ

 
冷たい雨が降っていたが、まだ雪ではなく雨なので暖かいということになる。
薪ストーブが調子よく燃えて、鉄瓶からは松風が聞こえて来るようになり、室内は程よく暖まり、裏庭に向いたテーブル席は特等席に。
そんな晩秋の雨の日曜日の午後、あるお客様が窓外をずっと眺めておられた。「なにかおりますか?」と伺ったら、池の水面に落ちる雨足が、流れているピアノ曲と見事に合っていると。みると確かに雨は霧雨でもなく、激しくもなく、落ち葉を浮かべた四角い池の水面をリズムよく叩いていた。
晩秋の雨の日のベートーベンのピアノソナタを味わう方の感性は、寂れた追分宿にも風情を見出されることだろう。
めだかの子たちは底でじっとしているだろうか。

 ■旧福永邸