otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

クリスマス・ツリー

otobokecat2008-12-10

無彩色の林の中で、威風堂々としているのは樅の木だ。
強い風が吹いても、しなることもせず、雪が降りその枝にたっぷりの雪を被ってもびくともしない。何重にもパラソルを挿すように枝を広げて、しかも常緑樹なのでびっしり葉がついて、容易に幹に近づくことすらできないので、樹の中が野鳥たちの格好の隠れ場所にもなっている。
落葉樹が裸になった明るい森にあっては、今まで林の中に埋もれてしまってほとんど存在感のなかった小さい樅の木が、ここぞとばかりに思いっきり日差しを浴びている。写真もそんなちび樅の樹。
かつて東京が江戸だった頃、樅の木は東京にもあったと言われるが、いまやほとんどその姿を見ることはできない。公害と温暖化がその原因だと言われているが、底面積をやたらに取る円錐形の樅の樹は、どのみち土地のない都会には居場所はないだろう。
この樅の木が日本でも一番もてはやされているのがこの12月=クリスマス・ツリーとしてだが、単なる商業的な戦略にのせられているだけはなく、この樹が人気があるのはやはりそこにちゃんと魅力があるからだろうと思う。頼りがいのある存在感が、人々の心を引き寄せるとでも言おうか。かたちといい、落葉の季節の後は深い緑色もまた目に新鮮だ。生の樹を飾るとその良い香りにも驚く。
欧米では、家族に思い思いのプレゼントを自分でラッピングしてツリーの下に置き、クリスマス当日の朝開けてみるという風習が今でも家族ぐるみで行われている。プレゼントを貰うのは子供ばかりではない。またクリスチャンでなくても例えばユダヤ教の人でも、ツリーを飾りプレゼント交換をする人は多いと聞く。ものの交換や、カードを送るということは「心の交流」がその鍵であり、乱暴に言うと日本のお歳暮や年賀状に通じるものがここにはあるように思う。
さて、この二冊のクリスマスにまつわる絵本も、樅の木のことを教えてくれる。
■牧野鈴子の『森のクリスマスツリー』(文研出版 1982)は自作の絵本第一作にあたるとのこと。森の大きな樅の木の下に、おじいさんは、樅の木を切り出して町で売ったお金で、クリスマス・イブに森の鳥や動物たちに木の実や野菜を並べて贈りものにする。森の主とも言える一本の樅の大木が、森のみんなの拠り所となっている。 
■『クリスマス・イブ』ほるぷ出版 1979 マーガレット・W・ブラウン作、ベニ・モントレソール絵 
 
マーガレット・ワイズ・ブラウンの遺作に、舞台美術のモントレソールが絵を付けたもので、他のブラウン女史の絵本とはちょっと趣が違う。クリスマスが題材の絵には珍しくオレンジと黄色が使われているが、この色がろうそくや暖炉の炎の温かみや、クリスマス・イブの子供たちの胸の高鳴りをあらわしているようにも思える。
二作とも静かで暖かい話。

昨日は全国的に暖かく、ここも雪ではなく大雨だった。雨で地面が少し緩み、畑の黒土からは春先のような陽炎が立っていた。池の氷も融けた。
昨日、おとといと中央市に出るため東京へ行っていて、雨の中をもしや雪かとびくびくしながら山を上がってきたら、雨でほっとしたのだった。
戻ってきた今日は、閉店した骨董「時幻」さんの店主YさんとバイトのHさんと4人でお疲れ様ランチをした。20年営業されたよし。
午後は店で発送作業。この二日間、お待たせし方がた申し訳ございませんでした。本日発送完了しました。
市で仕入れた本を店に運び込む。われわれにとっては年内最後の中央市なので、しかも今回は荷も多かったので、少しきばってみたが、沢山買うことができてよかった。