otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

氷塊が瓦を滑る大寒

子供向けの本や映画は、読者がどんどん入れ替わりながらも、人気があるものはずっと読み続けられていくので、むしろ大人用のものよりも流行に左右されにくいといえる。親になってから自分がとても気に入っていた本を本屋で、図書館で見つけて、自分の子どもに与えるということによって繰り返し選ばれていき、面白い本は廃れるということが無い。つまり古本屋がおおいに活躍できるはずだが、読み込まれた絵本や本はどうしても汚れと痛みが激しく、売り物にはならないケースも多い。
昨年あたりから、自分で児童文庫を開いていたり、あるいは読み聞かせの訓練を受け、ボランティアで学校に招かれたり、各地のお話の会でおはなし(ストーリー・テーリング)をしている方がたに当店へお越しいただけるようになってきている。現に児童書は力を注いでいる分野の一つで、棚にさす本はセレクトしているつもりだが、本職の方に見ていただくとなると自己流の品揃えなのでちょっと緊張するが、励みにはなる。お話用に人気のある絵本なども教えてもらっている。
たかが子どもの本というなかれ、大人が読んでも十分楽しめる本は沢山ある。児童書という形を借りて、言い放つことの出来なかった思いを形にしているケースも欧米では多く見られるが、難しく考える必要はなく、まずは楽しければそれが何よりなのだ。若い人向けの『日和文庫』にも児童書を推薦してきた。
楽しく人気のある外国の児童文学には名訳がつきもので、石井桃子訳の『クマのプーさん』(AAミルン)、大塚勇三訳の『長靴下のピッピ』(リンド・グレーン)、渡辺茂男訳『エルマーのぼうけん』(ガネット)、村岡花子訳『赤毛のアン』シリーズ(モンゴメリ)などがその代表作だと思う。
クマのプーさん (岩波少年文庫 (008)) 長くつ下のピッピ (岩波少年文庫 (014)) 赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫) エルマーのぼうけん (世界傑作童話シリーズ) 
さて、「パディントン」と聞いて、英国の駅とダッフルコートを着たジャムつきパンの好きな熊のどちらを思い浮かべるだろうか?私は後者で、童話の主人公の名前の付いた駅があるのかと驚いたら逆だった。パディントン駅でブラウン一家に拾われた熊の名がその駅にちなみパディントンというのだ。昨年イギリスへ行ったとき、電車はユーストン駅に到着したがぜひともパディントン駅に行ってみたかった。わざわざ行って見たところ、ちゃんとブロンズ像が駅の構内にあり、たかが子供向けのキャラクターの一つではないのだと実感した。

余談:なんと像の前には今イギリスで流行の回転寿司のバーがあった。
このクマの出てくる愉快な童話がマイケル・ボンド作の『くまのパデイントン』シリーズ(福音館書店)で、英国で出版されてから50年が経っている。英国では12冊出版され、日本では昨年秋までに内10冊が翻訳されていて、訳者は1−7までは松岡享子、8−10は田中琢治との共著となっている。
9巻『パディントンのラストダンス』を毎晩布団の中で読んでいるが、ハラハラどきどきだ。奇想天外の話の展開で、常識がどんどん崩れていくのが実に愉快。パディントンと暮らすブラウンさん一家の懐の深さには恐れ入るなぁ。子育てで悩む親御さんにもお勧めの一冊。

パディントンのラストダンス (世界傑作童話シリーズ)

パディントンのラストダンス (世界傑作童話シリーズ)

パディントンのラストダンス―パディントンの本〈9〉 (福音館文庫 物語)文庫版

冬期は平日は閉店している当店だが、幸いネットによるお買い物をして下さる方が冬は増えて、店内では発送作業、また少々収拾が付かなくなってきている二階の倉庫の片付けなどに専念している。
昨日今日とちょっと気温が緩み、屋根に凍りついていた雪の塊が瓦の上を滑り降り、階下に落ちてくるので、店の北側は大変危険地帯となっている。その派手な滑走音を聞きながら…。
大寒と言われても、もうだいぶ前から「大寒」であり、まだ当分「大寒」であろうという追分です。庭の落ち葉の山にナマゴミを潜り込ませていたのが、昨今の凍りつきで埋め方が甘かったところを、猪に派手に荒らされてしまいました。森から点々と蹄の跡が雪の上についています。雪の上の足跡を辿って行ったら猪の住処にお邪魔できるでしょうか?
散らかりもまた凍り付き…。放置です、当分。