otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

駅弁を開ける前に

●おぎのやの釜飯:善光寺ご開帳記念掛け紙デス。
「日和」が発行になりました。今回当店が「日和文庫」にさした本は、宇野亜喜良著『奥の横道』(幻戯書房)と『弁当掛け紙ものがたり』(けやき出版) 。『奥の横道』はイラストレーター界の重鎮ならではの多彩な交友録に読み応えがあり、また見開き左半分がイラストという贅沢な構成となっています。さらに一日に一句付いているのがまたなかなか面白く、サービス精神旺盛な一冊です。イラストレーターの目の付け所というのがあり、文章にも絵描きの鋭い観察眼が反映しているように思います。『奥の横道』と同名の本は、他に二冊あるんですね。本家『奥の細道』というタイトルがやはり冴えているということなんだと思います。
奥の横道 駅弁掛け紙ものがたり
一方、上杉剛嗣著『駅弁掛け紙ものがたり―古今東西 日本を味わう旅』には著者の蒐集の一部が掲載されていますが、記録としても意味があると思います。駅弁の上に被さっている紙だけを集めている人がいたなんて。読後私は早速影響されて、釜飯の掛け紙のしわを思わず伸ばしてしまいましたが、なんとご開帳スペシャルのありがたい掛け紙だったのです。(ご利益がありそう?)
日頃ほとんど気にも留めていないこの小さな紙片に、様々な情報が詰まっていることを知りました。前書きにもあるようにこの本は、駅弁の本といえばありがちな弁当の中身の写真が一枚も無い、ちょっと風変わりな駅弁本です。紙もののコレクションとしてもこの掛け紙蒐集はなかなか奥が深く、はまってしまいそうな世界です。駅の周辺の観光案内とか、弁当箱を投げ捨てないで!という美化一言とか、戦争中の絵の無いものなど、世相を反映しているものもあり、実に興味深いです。
これが出たということは、次号の原稿締め切りが近いということ。ま、まずい。本の選定はとっくにできており、枕のよこに置いてあるのですが、床に就くなりすぐ寝てしまって、まだ読めていないのです。