クリエイターの足跡
先だって東京へ行った際に取次ぎに寄って、予約しておいた本を持って帰った。いつもは取次ぎ店の平積みしてある新着本から、手にとってみて気に入った本だけを店の新刊本コーナーへ選んでくるのだが、(買い切りなので選別が必要になるのだが)この本に関しては必ず欲しかったので、6月25日発売とのことで前回行った際(22日)に注文を出しておいた。入荷前に手配することは珍しい。本はタイトルだけではなかなか買えないものだが、直感でこの本だけは大丈夫だと思った。何しろ超人的に仕事をした人だもの。その本とは『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』(平凡社 コロナ・ブックス)。
今日から世田谷文学館にて同名の展覧会が開かれたはずで、この本はその図録として編纂されており、この本に氏のかなりの部分が網羅されている。絵本作家としてだけでなく、様々なデザインの仕事に実力を発揮していて、特にロゴの頁をみると、見慣れた雑誌がずらりと並び、タイトルロゴを数多く手がけていたことを知る。「平凡パンチ」「POPEYE」「an・an」「BRUTUS」「ダ・カーポ」「たくさんのふしぎ」等‥。勿論アート・ディレクターとして雑誌全般にも関わっていたけれど、これらのロゴがどれもインパクトがあり、ロゴだけで雑誌の個性をも表しているのは驚きだ。
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絵本の仕事は一番本命なのに、それでいて「遊び」の部分を残したかったと本人が語っていたという。絵本では『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』『くるまはいくつ』(すべて福音館書店)等は、常時当店でも置きたいと思う絵本ばかり。作品ごとに様々な画材や画風を使い分けたのには『絵本の世界110人のイラストレーター』で世界の絵本作家を見つめた際に学んだことなのかもしれない。
絵地図、スケッチと手書きのエッセイは「an・an」などに掲載された。おそらく絵地図にも「遊び」が含まれているかなと思う。実に楽しそうに、のびのびと描かれていて、ただ楽しいだけでなく、ユーモアやパロディも見え隠れしていて活き活きとしている。
- 作者: 堀内誠一
- 出版社/メーカー: 日本エディタースクール出版部
- 発売日: 1998/07
- メディア: 大型本
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50代で逝かせてしまうには、あまりに惜しい人だったとつくづく思うが、没後20年以上たってもなお著作が出版され続けており、クリエイターというのはやはり凄いな。古本屋にいれば、その足跡にずっと触れていられるのは嬉しいことだ。
古びない感性がずっとずっと生き続けて行くことは間違いない。
★店の東側に夏椿が二つ咲きました。
一日花で、翌日みると落花していた。
果たして、木全体が花盛りになるのか?永楽屋ガーデンさんが、この場所には是非この木をと選んでくれた夏椿。