otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

クリエイターの足跡

otobokecat2009-07-04

先だって東京へ行った際に取次ぎに寄って、予約しておいた本を持って帰った。いつもは取次ぎ店の平積みしてある新着本から、手にとってみて気に入った本だけを店の新刊本コーナーへ選んでくるのだが、(買い切りなので選別が必要になるのだが)この本に関しては必ず欲しかったので、6月25日発売とのことで前回行った際(22日)に注文を出しておいた。入荷前に手配することは珍しい。本はタイトルだけではなかなか買えないものだが、直感でこの本だけは大丈夫だと思った。何しろ超人的に仕事をした人だもの。その本とは『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』(平凡社 コロナ・ブックス)。堀内誠一旅と絵本とデザインと (コロナ・ブックス) [ 平凡社 ] こすずめのぼうけん (こどものとも傑作集)
今日から世田谷文学館にて同名の展覧会が開かれたはずで、この本はその図録として編纂されており、この本に氏のかなりの部分が網羅されている。絵本作家としてだけでなく、様々なデザインの仕事に実力を発揮していて、特にロゴの頁をみると、見慣れた雑誌がずらりと並び、タイトルロゴを数多く手がけていたことを知る。「平凡パンチ」「POPEYE」「an・an」「BRUTUS」「ダ・カーポ」「たくさんのふしぎ」等‥。勿論アート・ディレクターとして雑誌全般にも関わっていたけれど、これらのロゴがどれもインパクトがあり、ロゴだけで雑誌の個性をも表しているのは驚きだ。
[rakuten:iqgakuen:10000219:image] おそうじを おぼえたがらないリスのゲルランゲ (世界傑作童話シリーズ) たろうのおでかけ くろうまブランキー くるまはいくつ (こどものとも絵本) ちのはなし (かがくのとも絵本) 
 
絵本の仕事は一番本命なのに、それでいて「遊び」の部分を残したかったと本人が語っていたという。絵本では『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』『くるまはいくつ』(すべて福音館書店)等は、常時当店でも置きたいと思う絵本ばかり。作品ごとに様々な画材や画風を使い分けたのには『絵本の世界110人のイラストレーター』で世界の絵本作家を見つめた際に学んだことなのかもしれない。
絵地図、スケッチと手書きのエッセイは「an・an」などに掲載された。おそらく絵地図にも「遊び」が含まれているかなと思う。実に楽しそうに、のびのびと描かれていて、ただ楽しいだけでなく、ユーモアやパロディも見え隠れしていて活き活きとしている。

唯一残念だったのは、この本が装丁やロゴデザインに長けた堀内誠一の本だというのに、表紙のデザインがちょっとどうなんだろう。素人が言うのもなんだが、少なくてもこの帯のできは残念。顔の真ん中で切れているので、ちょっとずれただけでも堀内氏の顔が歪んでしまう。帯によって表紙が台無し。他でもない堀内氏の図録なら、もう少し気の利いた効果のある帯にして欲しかったと私は思うのだけど・・・。
50代で逝かせてしまうには、あまりに惜しい人だったとつくづく思うが、没後20年以上たってもなお著作が出版され続けており、クリエイターというのはやはり凄いな。古本屋にいれば、その足跡にずっと触れていられるのは嬉しいことだ。
古びない感性がずっとずっと生き続けて行くことは間違いない。

★店の東側に夏椿が二つ咲きました。
 
一日花で、翌日みると落花していた。
果たして、木全体が花盛りになるのか?永楽屋ガーデンさんが、この場所には是非この木をと選んでくれた夏椿。