otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

風が作った草原の行方

今日は、軽井沢サクラソウ会議の主催する第20回「風土フォーラム」があり、「台風(2007年9月6日)で被害を受けた国有林は今どうなっているのだろう」と言うタイトルで行われるとのこと、その現場のすぐ近くに住んでいる身としては、是非いろいろ教えてもらおうということで参加することに。本来は現地視察が主でしたが、あいにくの雨降りで座学のみとなり、会場であるヴェルデ軽井沢<練馬区立軽井沢少年自然の家)の会議室へ行って来ました。
東信森林管理署の方と、岐阜大学の津田智先生のお話は、ちょっと大学の講義みたいでしたが、いろいろなデータや写真もたくさんあり、私のような素人にもわかりやすい話でした。
1000m林道北石尊山登山道入り口東の部分は、二年前の冬に風倒木は根は残して伐採<大部分根こそぎ倒れていましたが)、切った丸太は片付けられ、現在は一見更地のようになっていますが、復旧検討委員会の出したこの土地の今後は、天然更新により森林に導いていくと言うものでした。40年前には草原<追分原)だったはずの場所ですが、年間降水量1200mmほどある軽井沢の場合は、手を入れない場合は草地のままと言うことはなく、やがては森林になるということでした。かつてここは官牧だったので、そのときは放牧によって草地であったのです。つまり放置されていたのではなく、手が入っていたわけです。戦後ストローブマツが植林され、あまり間伐などの手も入らなかったせいで、すっかり込み入ったうっそうとした森林となってしまい、林は昼でも暗くて花も咲かず、蝶もこない場所になっていたのです。それが二年前の台風によって植林した木々が真っ先に倒れ、密集してたがためにドミノ倒しのようにすべて倒れて壊滅的になったのでした。
 
現在は、私が時折紹介している写真でお気づきのように、メマツヨイグサ↑、ヒメムカシヨモギなどがもっともいばっていて、「外来種の畑」状態と津田先生は呼んでおられましたが、まさにそのとおりです。長年うっそうとした植林の林で地面に日もささず、メマツヨイグサすら咲いていなかった地表が、自然災害の撹乱によって日の目をみた場合、芽吹いてくるのは「埋土種子(まいどしゅし)」が土の中でいつか来るチャンスを伺っていることによるのだそうです。
「埋土種子」とは「土の中に眠っている生きた種」のことです。外来種のほうがやはり図々しいらしいです。これが広葉樹の林だと、切り株から新芽が出てくるのですが、、松のような針葉樹は萌芽しないため、埋土種子に大いにチャンスがあるというわけです。
ススキや、桔梗、おみなえし、マツムシソウ、吾亦紅といった草の生えた風情のある草原にしたいと皆さん期待しておられるでしょうが、先ほど書いたように、何時までもここが草原のままと言うわけには行かないようです。
でも植林をしないと言うことだけでも、第一歩かなと思います。三ツ石(みついし)のほうの国有林では、林の再生の実験もやっているとのこと、まったく手付かずだった林も台風によって、人々の関心が寄せられるようになったわけで、今後これを機に自然や景観、林業に、みなの関心が高まればよいと思います。