otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

届かない賀状

      ■眠るタラ
ここでの生活は、その気候のお陰で、めりはりが相当はっきりしていて、自然のサイクルとともにあります。
思想家、作家、学者のかたが多くこの高原の林の中に、住居をおいておられるのも、平べったい説明ですがおそらくこの気候が思考に役に立つからではないかと、凡人の私は思います。とりたてて真冬は真空の世界です。

風立ちぬ』(堀辰雄)の終章が、厳寒の軽井沢で執筆されたように、特にこの厳しい寒さには、気持ちを内へ内へと向かわせるような作用があります。私でさえ、雪景色の中で物思いの日々を過ごしています。クリスチャンではないけれど、今はわたしにとって「レント」の時間にあたり、暖かくなって木が草が芽吹く頃にこの呪縛から解き放たれることでしょうが、まだまだだいぶ先のことです。ですが必ず春は来るのが救いです。

阪神淡路大地震から15年の月日が流れましたが、一被災者家族としては、生き残ることができた恩返しの心は時がたっても、忘れることはない、否、年々深く体の芯に染込んでいくようにさえ思います。

今朝の追分は、上空には雲ひとつ無い青い空がひろがり、無風、気温は−12℃。身も心も引き締まる朝ですが、太陽がのぼると、朝日の中を鳥たちがやってきました。
公式には−14.6℃だったとのことです。長野一寒かったのは野辺山高原で−20℃でした。
目前で一羽のシジュウカラが勢いあまって、ガラスに激突して脳震盪を起こして落ちてしまいました。こういうときは人間は安易に手を差し伸べてやるわけには行きません。祈るような気持ちで見守ったところ、やがてわれに返って、飛び立っていき、ほっとしました。この冬一番とも思える冷え込みの中、何時に無く多くの鳥が木立の中を飛び交っています。

さて、私も青空の下、雪道を踏みしめて歩いていこうと思います。