otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

草の花のごとし


村の知人と連れ立って、故堀 多恵さんのご葬儀に参列してきました。18年前にできた追分の笑坂の脇にある「軽井沢追分教会」で本日正午から執り行われました。教会付近の路上では村の男衆が交通整理に当たっておられ、中では信者の方が中心となって受付などのお手伝いをされていました。教会に入りきらないほどの大勢の人々が参列していました。式は鐘の音とともに始まり、稲垣牧師の司会で進められ、多恵さんのご指名ということで太田愛人氏(前日本キリスト教団上星川教会牧師)が追悼の辞を述べられました。
多恵さんがこの教会に来ておられる事は知っていましたが、配られた式次第の略暦によると、母方のご祖父様が日本メソジスト教会の土屋彦六牧師だということで、生まれながらにその環境にあったようです。本名の「多恵」さんはこの彦六牧師の命名であり、太田氏によると、真理子、多恵子はクリスチャンに多い女の子の名前だということでした。なるほど・・・
最後にご遺族の挨拶があり、この冬の変動の激しい気候が多恵さんの弱った肺には堪えられなかったとのこと、96歳9ヶ月とはいえ、ご本人はこの冬を乗り切ったらと、先のことを考えておられたとのことでした。3月末に御本を出されたとのことで、その謹呈作業に取り掛かる矢先だったとのことです。最後までチャレンジャーであったことに驚かされます。
ご養女和世様のお話の中で、16日夜に旅立たれたのは翌17日が堀辰雄・多恵夫妻の結婚記念日なので、お迎えに来られたのではないかと。ご遺族はそう思うことにより、意外にも少し早かったお別れに際して、心安らかにお見送りができたのではないかと思ったことでした。
出棺時には穀雨が降り始めていました。雪ではなく雨、まさに恵みの雨です。いまだ殺風景な高原の村に、草の花が我もわれもと咲くのも、もう間もなくのことでしょう。

堀辰雄の周辺 堀多恵子 山ぼうしの咲く庭で

■『葉鶏頭―辰雄のいる随筆』堀多恵子 麦書房
   旧版:昭和45年、新編:昭和53年
■『片蔭の道』堀多恵子 青娥書房 1976
■『返事の来ない手紙』堀多恵子 文京書房 1979/09
■『来し方の記・辰雄の思い出』堀多恵子 花曜社 1985/05
■『山麓の四季』堀多恵子 花曜社 1986/05
■『堀辰雄の周辺』堀多恵子 角川書店 1996/03
■『山ぼうしの咲く庭で』堀多恵子・堀井正子 オフィス・エム 1998/04/20