otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

『春の数えかた』

2月28日はあまり芳しくない日回りでした。レイニーマンデーにして、月末。レイニーどころか、追分は地面が見えていたところにまた雪が降り始めて、しかも霧も巻いていて、どこもかしこも白い世界になっていました。月曜は開店日ではありませんが恒例市場行きの日であり、無理して早起きして車中の人に。幸いこの日は久々に麦小舎のお二人との同行となりました。実は四人で揃って一台で行くのはこの日がはじめてで、空模様とは裏腹に楽しい道中でした。
都内に入ると道は混んでいて、早く出発したのにもかかわらず、いつもと変わらない到着時間でがっかり。しかも雨天ゆえの交通量が多い所に加えて、月末と言うことかあちらこちらで工事をしていて、車線が減ったりして渋滞を引き起こしていました。(もっとも一日違いでマラソンは雨にたたられず良かったですね。)
週末の営業日は軽井沢でも天気は穏やかで、ようやく地面が姿を出したので、林の中の近道で店に出勤していました。ずっと雪に覆われていたので、落ち葉はくたびれてしまっていましたが、林の中で時折青々とした苔の塊りが姿を見せているところに出くわします。あたかも緑の島といった風情で、苔にとっては寒く吹きさらされているよりも、雪にスッポリと埋まっている方が湿度も保たれてむしろ機嫌がいいということのようです。
おそらく木の切り株とか、朽ちた倒木のかけらの上に菌がついて苔が生息しているのだとおもいます。緑のものが何も見当たらない林の中の地面の上で、すこぶるきれいな緑色を見せつけてくれました。
やがてあたりは緑だらけとなり、苔の塊りにも目も留めなくなるでしょう。
最近持ち歩いているのは、日高敏隆の『春の数え方』(新潮文庫)。薄い本ですが様々なことを教えてくれる一冊です。動物行動学者である著者のエッセイは、いわばわかりやすい授業のようなもの、「なるほど!」「ほー」と感嘆詞入りで読んでいます。まさしく昨今のめまぐるしい気候の変化のなかで、いかに植物や動物は春の到来を知るのか、確かに不思議。人間のようにコートやマフラー、はたまたエアコンで好き勝手に調節することはできないわけで、一生の短い彼らにとって生まれるタイミングを逸すると、食べ物もなく、繁殖もできずまさに死活問題となるわけです。最終項の表題の「春の数えかた」は実に興味深い一文です。有効積算温度を計っていると聞くと、数字に弱い私としては、虫の方が人間より凄いのではと単純に思ってしまいました。