otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

送春のこころ

熊田千佳慕の言葉―私は虫である (「生きる言葉」シリーズ)
熊田千佳慕の言葉―私は虫である (「生きる言葉」シリーズ 求龍堂2010) には、細密な昆虫画家だった熊田千佳慕の真髄が溢れています。クマチカ氏は地面に這いつくばって、虫と同じ目線になると様々なものが見えてくるといいますが、わたしも及ばずながらこの地に暮らすようになって、満開のソメイヨシノも良いけれど、見上げなければ気付かない山の桜にむしろ心惹かれ、春浅い林に現れるたった一輪のフデリンドウ青い花に出会うことに興奮するようになりました。
昨日たまの恒例?徒歩郵便局行の帰りに、村外れの18号線沿いの花屋に寄ったらピッツア・クイエラさんのお二人にばったり。しばし立ち話をしていたら、彼らも同じようなことを言っていましたっけ。彼らはこの地に来て、桜よりもむしろ早春の辛夷に惹かれるようになったと。
店内には、他にもレストラン関係の人らしき方も見かけましたが、確かに大型連休後から夏季繁忙期までの晴れ間は、束の間の庭弄りができる時期です。クイエラさんのお二人も、店の合間にせっせと竈用の薪作りや庭の手入れなどの外回りをご自分たちでやっています。庭にこつこつとデッキを作ったり、一方、あれこれ苗木を詰めて植えて、園芸師の岡田さんに注意されたりしていました。都会と違って、ここでは何を植えるかというのも、店の雰囲気創りの一環として大事です。花苗でも、植木でも。内装と同じくらい窓外の景色も重要です。
この花屋(フラワーフィールドさん)に足を踏み入れたのは、実は初めて(汗)。近年でき、かなり広いのですがいつもあまり人影がないので、ちょっと二の足を踏んでいましたが、この日は通りかかったら人影があったので、誘われるようにふらふらと・・・。
バスケットに入っているモノからみて別荘客のような買い物の仕方をしているグループが何組もあり、春の平日でも滞在客はいるんだなぁ・・・と。水曜日はこのあたりのレストランや美術館は休みが多いので、追分宿など人っ子一人いないのですが、いるところには居るんだ!軽井沢での植栽は難しいですよー。永楽屋ガーデンさんの講座を是非ご参考に、と宣伝したりして【笑】。
おりからの下校の小学生たちに混じり、浅い緑と花盛りの村を歩きながら、この今年の緑や花を見ることができなかった友人を思い浮かべつつ、行く春を思いました。

何にも無かったゼロからの出発だと、今は道端のタンポポさえも綺麗に見えます。そのうちにタンポポだらけとなって、何とかしてくれと悲鳴をあげてしまいます。

「送春」  熊田千佳慕
来る年も来る年も、
冬が過ぎれば春が来ると気にもかけずに流れてきたが、
今の私には、花の季節を迎えることは、
すばらしい感動なのだ。

来年も又、この花の季節になれば、
めぐり会えるようにと祈りながら、
春を送る。