otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

自然とのあみこみ路

10月23日に終了した今年度のイベント。その後ホンモノウイークの作家さんたちの作品、古本屋の本、仮設トイレの撤収が10日間かけてあり、ついに最後の荷物が本日出てすべてが終了しました。後に残っているのは私が片付けなくてはならないものばかり・・・やれやれ。
先週日曜は、31日に義父の一周忌があったため、Fさんに店番を頼んで関西に帰省していました。荷物もあまりないし、休養もかねて電車の旅としました。
しなの鉄道で「信濃追分」から「小諸」乗換えで「篠ノ井」まで。「小諸」で乗り換え時間が20分もあるのですが、ふと見るとうどん・蕎麦の店がホームにあるではありませんか。折から昼時だったので、早速一杯いただきました。ホームには長野行き電車がすでに入線していて、おばさんの頭には時刻表が入っているらしく、「時間はまだたっぷりあるので寒かったら車内にどんぶりを持って行っても良いよ」とのこと。やさしいなあ。(かけ蕎麦350円)ここのスライド式のアイス・ボックスにもそそられました。
篠ノ井」まで次第に混んできて、この日が日曜日であることを思い出しました。篠ノ井から乗った「ワイドビューしなの」も自由席は6両編成で二両しかないということもありますが、長野からすでにかなり乗車していて、並んで座れない状態でした。一日上下二本だけ「長野⇔大阪」ですが、母と夕食を取る約束をしたので名古屋で新幹線に乗り換えて行きました。
車で行くのと比べてほぼ同じ時間がかかりますが、寝て行くことも本を読んでいくこともできるので、電車のたびはのんびりできます。
法事が翌月曜日。火曜の昼には関西を立って行きと同じルートで帰路に着きましたが、大きく違うのは帰りは平日だったこと。車内はがらがらでした。
またしなのの復路は車窓が上り勾配で、景色が良く見えました。特急「しなの」の路線は名古屋の千種を出たあとはずっと谷あいを川と道路と鉄路が三つ編みを編むように進んでいきます。思えば、水が浸食してできた川が作ってくれた谷に人が路と鉄路を作らせて貰ったわけですね。道の駅があったり、陶器の工場があったり、農家の柿木がたわわに実っていたり、車窓の景色は見ていて飽きません。ミステリーなんかを開いてはこの窓の景色を楽しめないと思い、電車の本は『芸術はウソつかない』(横尾忠則対談集、ちくま文庫)を持って行き、時々一話づつ読みました。写真が一枚も入っていないのだけれど、不思議と行間に対談者の画像が見えてくるように感じました。話べたを自称する横尾忠則なんですが、それがかえって功を奏して対談者の個を浮かび上がらせているような感じでした。勿論取り上げている人のラインナップも、まあそれなりに個性的なんですが。井上陽水中沢新一増田明美唐十郎三宅一生ビートたけし引田天功鶴見俊輔など・・・。
川に沿った鉄路の上をタタタン、タタタンという車輪の音も軽やかに特急は走ります。
私は窓辺に頬杖つきながら、弁当広げたり煎餅をかじったり、蜜柑むいたり停車した駅のホームに駅名を探したりしながら、「あらまた柿木だわ」とか言いつつ。車中番頭はほとんど安眠していたので、一人で車内の時間を楽しみました。昨年此処を通ったのは目呂二展の最中だったなぁと、この過ぎ去った一年の速さにおののきながら、川と道路を織り成しながら、迷うことなくぐいぐいと勾配を上っていく特急を頼もしく感じたことでした。こうじゃなくちゃ。
暖かい日々とは言いつつも、やはりここは何処よりもひんやりした追分に戻ってきました。信濃追分の駅前の駐車場は24時間200円ということで、3日止めて600円。安い!オデッセイにとっても休憩の3日間でした。