otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

田園のチカラ(東北紀行)

先日の東北旅行の最後の宿泊先は鳴子温泉です。なぜそこなのかというと、今回のテーマである3泊4日の一筆書きの線上で私が行った事のない、あまり混んでなさそうなところという、実にわかりにくい選定なのですが、結果的にどこも案外面白い場所でした。(主人や義母はどう思ったかわかりませんが。)
黒塀と枝垂桜の葉の緑が美しい角館を後にして、唯一一筆書きから飛び出していたので、大曲まで新幹線小町で戻り、これでライン上に戻り、奥羽本線で新庄まで、そこからで古川方面へ、電車の終点駅名はその名も「子牛田」。こまち以外はずっと各駅停車の旅で、車窓にはずっと田園風景が続きましたが、こころなしかよく見えました。味わえるというか。新幹線だと窓の景色飛んでいき、なんとなく早すぎるのです。
この奥羽東線は別名「奥の細道 湯けむりライン」といわれていて、26ほどある駅のなかに「温泉」が駅名が5つもあります。
この日の宿は、駅に一番近い料理が良いという「大正館」さん。
駅から5分もいかないうちに到着。スタッフの方が明るく迎えてくださいました。トイレがついていないけれど、リーズナブルな値段の部屋ということで、ここをお願いしていましたが、宿泊の人数の関係か、トイレが付いた部屋に泊めてもらいました。
足湯が駅にありましたが、手湯もあり、早稲田の学生が掘ったという温泉施設もあり、さすが温泉地です。歓楽街的要素は町の中心部にはなく、むしろ地元の人用の魚屋、肉や、洋品店、時計やなどが軒を並べ、観光客がいようがいまいが、町はなんとなく機能しているように見受けられます。実際は年々温泉宿は減ってきているということで、特に震災後はかなり落ち込んでしまい、まさに生き残りをかけて今年こそと頑張っているようでした。ついこの間まで避難してきた方々を集団で受け入れていたようです。
地元の奥さん達がおしゃべりをしている光景があるのはいいですね。古布を使って、雑貨を作って店先に飾ったりしていました。
食事は珍しい食材や地元のものを使い、なかなかのもので大満足でした。大正館に泊まっているというと、まちの人がみな口々にあそこは料理が良いでしょうと言っていました。オススメですが、館内移動が階段のみなので、年配の方には少しきついかもしれません。
鳴子温泉というとこけしが有名。翌日町歩きをした時に工房に寄って見たら、口少ない旦那さんがせっせと轆轤を回していました。間伐材で作った木の団扇に、ご夫婦で絵をつけたものを買い求めました。菊や桔梗が典型的な柄だそうです。
宿の女将さんがとても丁寧な応対で、いろいろお話を伺いました。小さいながら名前どおり大正からで、近々創業100年とのこと、こういう宿は「ただいま」という声とともに定宿にしたいものです。
仲代達也さんの映画『』の舞台にもなり、役者やスタッフも泊まって、得がたい体験をしたとのこと。そのときの抜擢の若手女優さんが、NHK梅ちゃん先生」の梅ちゃんの親友弥生さんです。

翌日は午前中手湯などしながら、午前中のんびりして、鈍行電車で古川まで行き、古川駅で新幹線「やまびこ」に乗り換えました。途中大きなビニールハウスをみかけ、よく見たらさくらんぼの木がすっぽり入っていました。大切な高額な作物を守ろうというわけですね。鳥ならまだしもどろぼう除けだったら少々残念ですが。
せっかく乗った「やまびこ」ですが「はやて」がやはり速いので、仙台では「はやて24号」に乗り換えて、我々は大宮で下車、あさま573号に乗り換えて軽井沢に戻りました。一方母は東京まで乗り、東海道新幹線に乗り換えて、関西に戻りました。

母にとっては約3000km4泊5日の鉄道の旅でした。長すぎでJRの発券機ですぐにはでないという代物でしたが、「じぱんぐ」利用30%オフで、乗車券は17000円弱でした。つなげると案外安くなるものです。我々は、例の東北スペシャルで13000円乗り放題(3泊4日)切符を使いましたが、特急券も、そして指定も6つまでOKですから、そう考えるとこの切符はかなりお得です。白神山地や、新庄、盛岡、小岩井、山形、平泉など次回にと残してありますヨ!

車窓から見た沿線にずっと続いた田んぼ、たんぼ、タンボ。日本人にはどうということのない風景ですが、次第に興奮してきました。なぜならこれはまさしく人間が作った風景であるからです。いけどもいけども田植えの済んだ田んぼがあるということは、皆人がそこで働いたということで。疲れたから今年は辞めておこうとか、ついうっかり忘れたというところはどこにもない。
なんとも人間の凄さを感じました。働くことの原点ですね。
東北地域で昨年春の被害を免れた人たちは、今年もまた収穫ができるという幸いを一層かみ締めながら農作業をされたことでしょう。窓外に同じ緑が広がるのも、山林とか草原と、田園ではまったく違うということにいまさらながら気がついた次第。