otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

夜の光

師走の連休に突入し、いわゆる盛り場?は人で溢れているようですが、追分はまあぼちぼちです。それでも今週で「ままごとや」さんも今季最後ですし、今後は一層静まり返る模様。金曜日は雪はときに吹雪くし、店の玄関は一度も開かないしで、少々途方にくれましたが、週末に入り青い空が見えるとそれなりに来店者もあり、安堵します。まさしく青空のチカラです。
さて、以前話しかけていた絵本のご注文ですが、昨日お客様がお見えになり、お買い上げいただきましたので、ようやく本の名を明かすことができます。
それは『月のみずうみ』という本でした。この本を学校の図書室の棚に見つけた少年が、どうしても手に入れたいとお母さんに頼んだのですが、すでに絶版。そこで当店にこの本を探してほしいという依頼がありました。本のタイトルしかわからなかったのですが、インターネットの時代はその点便利、調べたところ、1982年に偕成社から出た本で、作者はイワン・ガンチェフ、翻訳者は岡しのぶ。ということが判明。現時点では高価なものが古本市場に一冊あるのみでした。
イワン・ガンチェフでいろいろ探したところ『みずうみのたから』という絵本が1996年に講談社から出ていることがわかりました。表紙は『月のみずうみ』とは色あいがだいぶ違い、すでにこれも版元品切れでしたが、古本ならば比較的手に入れやすいものでしたので、取り寄せてみたところ、お話の中に出てきたのが「月のみずうみ」でした。これだ!と嬉しくなりました。どうやら同じ本のようです。とても素敵な話でした。
みずうみのたから (世界の絵本)翻訳者も三木卓に代わっていますし、別の出版社から今風のホログラムを使った新しいタイプで出すシリーズに選ばれ、訳者も装丁も変えたということなのでしょう。同じシリーズに『にじいろのさかな』があります。たぶんこちらはご存知の方も多いのでは?にじいろのさかな (世界の絵本)早速お客様に連絡して、二種類の本が手に入りそうだとお伝えしたところ、予想に反して、やはりオリジナルの『月のみずうみ』の方が欲しいとのこと。送料に加えて手数料もかかってしまっても、そうしたいということでした。そこで早速手配して、ようやく昨日、無事お手もとに届けるとことができたのでした。
手元に取り寄せた時に中を見比べてみました。確かに訳の仕方がだいぶ違っていました。少年の名も違いました。原文を読んでいないので、どちらがどうなのかはわかりません。絵はほとんどが同じで、ただ『みずうみのたから』の方は、あちらこちらにホログラムがその絵の中に施してありキラキラしています。
そして最後のページの絵だけは、構図はほぼ変わりませんでしたが、完全に描き変わっていました。『月のみずうみ』の方が全体的にイワン・ガンチェフの他の作品と似て、墨絵のような薄暗い雰囲気でした。↓
 
昨日は私は店頭に居なかったので、あいにく少年がこの本を手にするときに立ち会うことができませんでした。二冊見ていただいたうえで決めてくださいと二冊用意しておいたのですが、初心貫徹、『月のみずうみ』の方を購入されました。どうしても欲しいと思った本だけに、やはり思い入れがあったのでしょう。
新しい本の方が、明るい色調の表紙で、ホログラムもキラキラとしていて、普通の子どもだったらこちらの方が「カッコいい」と思いそうなのに、ちょっと意外でしたが、本屋的にはむしろ渋い本をチョイスする少年がいることを嬉しく思いました。きっと彼には本の放つ光が見えたのではないでしょうか?
イワン・ガンチェフについていろいろ知ることもできて、本を探す楽しさを味わうことができたことを感謝しています。

晴れた夜は、今まさに追分では雪原に月の光が差し込み、表面が光り輝いています。思いっきり寒いですけれど、ここならではの楽しみもあります。叢の葉という葉はすべて散り、すでに雪のした。餌をねだる外猫どもの姿を隠す叢はなく、夜でもばっちり彼らの姿は丸見えで〜す!


佐久平駅近くのイルミネーション  青い光が流行っているらしい。