otobokecat’s blog

たまに本を読む猫

本の仕事

うめぼしさんのうた―わらべうた (日本傑作絵本シリーズ)

うめぼしさんのうた―わらべうた (日本傑作絵本シリーズ)

この本が出版されたのはなんと1967年、昭和42年です。今から半世紀前に出た一冊の絵本。

50年前の日本は、今からでは想像もつかない世界でした。
あげたらきりがありませんが、もちろんパソコンも携帯電話もなく、家電にしてもカラーテレビが東京オリンピック(1964)以降ようやく普及してきた頃です。そんないわゆるアナログな時代、児童書も国産はまだまだでしたが、そういう時代だからこそ、新しく出版される絵本はときには驚きもって迎えられました。
わたしにとって、非常に印象的だったのがこの本だったのです。まずその色使いです。カラーインク?による実に鮮やかな色使い。特に表紙は蛍光ピンク。捲ると今度は一転して鮮やかな黄色。当時の私は目がくらむほどの感動を覚えました。
わらべうたという古来ものを題材にしながら、それぞれのページの色使いとデザイン性の斬新なこと。(歳がばれますが、)これを見た時の小学生の私は本当に感動しました。

先日東京へ行った折、久々に神保町の本屋を覘く時間がありました。
児童書と絵本が沢山扱っている「ブックハウス神保町」でこの本の新刊本にまさかの対面をしました。古本としては時折目にしますが、まさか新刊本がまだ流通していたとは。
奥付を見ると発行は1967年11月ですが、2013年に5刷が出ていたのでした。それからすでに3年が経とうとしています。ブックハウス神保町は絵本と児童書の専門店で、在庫限り?デッドストックの本をちゃんと店頭にならんべているのです。
改めて開いてみると、これはお話ではないのでストーリーはないのですが、見開きのどのページの色もデザインもも覚えています。
これこそ絵本にしかできないことだとしみじみと思いました。

再版し続ける本は決して多くはありません。
新刊でも古本でも、図書館の本でも、本という形をとっていれば残っていくチャンスがあります。

もちろん時代は変わって、今の子供たちがこの本を手にとっても、こういう色合い、デザインは世間に溢れているので、私ほどの驚きは感じないかもしれませんが、わらべうたという伝統的なものと斬新なデザイン性の融合という点で、優れているものは残していってほしいと、私情を交えて思います。

私が日々している仕事は、本も街並みも、建物もすべてこの気持ちが核となっているんだろうな・・